売春防止法は、売春そのものではなく「売春を助長する行為」を罰する法律です。売春した本人には刑事罰がありません。ここが最大のポイントで、多くの人が誤解している部分です。

この記事は法律に関する情報整理です。特定の行動を推奨するものではありません。

📰 この記事の概要
売春防止法の中身を条文ベースで整理しました。
1 売春行為そのものに刑事罰はない。第3条の「禁止」は訓示規定にとどまる
2 罰せられるのは勧誘・周旋・場所提供・管理売春など「助長行為」。最重は10年以下の拘禁刑
3 パパ活で「大人の関係」がある場合、勧誘罪(第5条)に該当する可能性がある

01|⚖️ 売春防止法とは何か

1956年(昭和31年)に制定された法律です。正式名称もそのまま「売春防止法」。

▼ 売春防止法の基本情報
制定年
1956年
昭和31年法律第118号
条文数
40条
総則+刑事処分+補導処分+保護更生
核心
助長行為
売春自体ではなく周辺行為を処罰

まず第1条(目的)にはこう書かれています。

📌 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み、売春を助長する行為等を処罰することによつて、売春の防止を図ることを目的とする。(売春防止法 第1条)

注目してほしいのは「売春を助長する行為等を処罰する」という部分。売春そのものを処罰するとは書いていません。

そして第2条で「売春」の定義が示されます。

📌 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。(売春防止法 第2条)

ポイントは2つ。「対償」と「不特定の相手方」です。お金やモノを受け取る約束で、不特定の人と性交する行為が「売春」にあたります。特定の相手(恋人・パートナー)との関係は対象外です。

この定義を押さえておくと、このあとの条文の読み方が変わってきます。


02|🚫 売春行為に刑事罰がない理由

ここが売春防止法の最大の特徴であり、最大の論点でもあります。

▼ 禁止と処罰のギャップ
第3条(禁止規定)
「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」
→ 罰則なし(訓示規定)
VS
第5条〜第13条(刑事処分)
勧誘・周旋・場所提供・管理売春など
→ 罰則あり(最重10年の拘禁刑)

第3条は「売春をしてはならない」と定めています。でもこの条文には罰則が付いていません。

法律の世界では、こういう規定を「訓示規定」と呼びます。「やってはいけない」とは言うが、やっても罰しない。道義的な禁止にとどまる規定です。

なぜこうなったのか。制定当時の国会議論では、売春する側(多くは女性)を罰すると、困窮した女性がさらに追い込まれるという懸念がありました。罰するべきは売春させる側、つまり搾取する側だという考え方です。

この構造は70年近く変わっていません。良くも悪くも、売春防止法の根幹にある思想です。


03|📋 罰則の一覧(条文別)

では、実際に罰せられる行為を条文ごとに整理します。

▼ 売春防止法の罰則(軽い順→重い順)
第5条 勧誘等
6月以下の拘禁刑 又は 2万円以下の罰金
第6条 周旋
2年以下の拘禁刑 又は 5万円以下の罰金
第7条 困惑等による売春
3年以下の拘禁刑 又は 10万円以下の罰金
第8条 対償の収受等
5年以下の拘禁刑 及び 20万円以下の罰金
第11条 場所提供(業として)
7年以下の拘禁刑 及び 30万円以下の罰金
第12条 管理売春
10年以下の拘禁刑 及び 30万円以下の罰金

それぞれ見ていきます。

第5条:勧誘等

売春をする目的で、公の場所で客引きをしたり、つきまとったりする行為です。罰則は6月以下の拘禁刑又は2万円以下の罰金。

売春防止法の中で最も軽い罰則ですが、実務上は最も逮捕者が多い条文でもあります。立ちんぼ(街娼)が逮捕されるのはこの条文です。

第6条:周旋

売春の仲介をする行為。いわゆる「斡旋」です。罰則は2年以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金。

売春する相手を紹介する、場を取り持つ行為がこれにあたります。周旋の目的で客引きをした場合も同じ罰則です。

第7条:困惑等による売春

人を騙したり困惑させたりして売春させる行為。罰則は3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金。暴行や脅迫を使った場合は3年以下の拘禁刑又は拘禁刑及び10万円以下の罰金。

ここから先は、売春を「させる側」の行為です。未遂でも罰せられます。

第8条:対償の収受等

第7条の罪を犯した者が、売春の対価を受け取った場合。罰則は5年以下の拘禁刑及び20万円以下の罰金。「又は」ではなく「及び」なので、拘禁刑と罰金の両方が科されます。

第11条:場所提供

売春が行われると知りながら場所を提供する行為。1回限りなら3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金。業として場所を提供した場合は7年以下の拘禁刑及び30万円以下の罰金に跳ね上がります。

第12条:管理売春

人を自分の管理する場所に住まわせて売春させる行為。罰則は10年以下の拘禁刑及び30万円以下の罰金。売春防止法で最も重い罰則です。

「住まわせて」がポイント。住居と売春をセットで支配する構造を特に重く罰しています。

次はパパ活や夜職との関係を見ていきます。


04|💡 パパ活と売春防止法の関係

パパ活をしている人にとって、この法律はどう関わってくるのか。

▼ パパ活と売春防止法の接点
1
食事・デートのみ
売春防止法の対象外。性交がなければ「売春」の定義に該当しない
2
特定の相手と大人の関係
第2条の「不特定の相手方」に該当しない可能性。ただしグレーゾーン
3
不特定多数と金銭を介して性交 → 売春の定義に該当。ただし本人に刑事罰なし
不特定多数と大人の関係
⚠️
SNS等で相手を募集
第5条(勧誘)に該当する可能性 → 逮捕リスクあり

まず大前提として、食事やデートだけでお手当をもらう行為は売春防止法の対象外です。第2条の定義に「性交」が含まれているので、性交がなければそもそも「売春」にあたりません。

問題になるのは「大人の関係」がある場合です。

お金を受け取る約束で不特定の相手と性交していれば、第2条の定義上は売春に該当します。ただし、前述のとおり売春行為そのものには刑事罰がない。だから「パパ活で体の関係がある」だけでは逮捕されません。

ここまでは多くの人が知っている話です。

では何で逮捕されるのか。第5条の「勧誘」です。

SNSで「#サポ募集」「#大人OK」と投稿したり、マッチングアプリで性交を前提に相手を探す行為は、売春の勧誘にあたる可能性があります。もちろん個別の状況次第ですが、リスクがゼロではありません。

もうひとつ注意したいのは、友人を紹介する行為です。「この人、パパ探してるから紹介するね」と性交前提の相手を仲介すると、第6条の周旋に該当する可能性がある。善意のつもりでも法律上は斡旋行為です。

パパ活で知っておくべき犯罪リスクは他にもあります。詳しくは「パパ活は犯罪になる?女子が知っておくべき法律リスクと逮捕事例」で整理しています。


05|🚔 立ちんぼが逮捕される仕組み

ニュースで「立ちんぼ逮捕」を見かけることがあると思います。あれは売春防止法第5条が適用されています。

▼ 立ちんぼ摘発の実態
大久保公園周辺(2024年)
88人
女性の逮捕者数
第5条の罰則
6月
以下の拘禁刑 又は 2万円以下の罰金

第5条は「売春をする目的で、公共の場所で客引きをする行為」を禁じています。

路上で声をかける、特定の場所にたたずんで客を待つ。これらが勧誘行為とみなされ、逮捕の根拠になります。

正直なところ、罰則自体は軽い。罰金2万円以下という金額は1956年に設定されたままで、現在の物価に合っていません。でも逮捕歴は残りますし、実名報道されるリスクもあります。

注目すべきは、逮捕されるのが売春する側(多くは女性)だという点です。買う側を直接罰する規定は売春防止法にはありません。この非対称性はずっと批判されていて、法律の構造的な問題として議論が続いています。


06|⚠️ 売春防止法の限界と課題

この法律には、制定から70年近く経った今でも変わっていない問題がいくつもあります。

▼ 売春防止法の主な課題
買春側を罰せない
売る側の勧誘は罰するが、買う側を直接罰する条文がない。海外では買春処罰モデル(北欧モデル)が広がっている
被害者保護が弱い
管理売春の被害者に対する支援制度が不十分。婦人保護事業はあるが、利用のハードルが高い
罰金額が時代遅れ
第5条の罰金は2万円以下。1956年の金額がそのまま。抑止力として機能していない
性交類似行為が対象外
定義が「性交」に限定されている。いわゆる風俗営業(本番行為なし)は売春防止法の対象外

一番大きいのは、買春側を罰する規定がないことです。

フランスでは2016年に買春処罰法が施行されました。スウェーデンは1999年から、ノルウェー・アイスランド・カナダ・アイルランドなども買春側を処罰する法律を持っています。

日本の売春防止法は「売春させる側」を罰する構造ですが、「買う側」への直接的な罰則がない。この点は国際的に見ても遅れていると指摘されています。

もうひとつ。第2条の定義が「性交」に限定されているため、性交類似行為は対象外になります。風俗店での本番行為以外のサービスは、売春防止法の枠組みには入りません。

2024年には困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(困難女性支援法)が施行されました。売春防止法の補導処分の枠組みに替わる支援の仕組みとして期待されていますが、まだ運用が始まったばかりです。

法律は変わらなくても、社会は変わり続けている。そのギャップをどう埋めるかが問われています。


07|❓ よくある質問

Q. 売春した本人は逮捕されないの?

売春行為そのものには刑事罰がありません。第3条で禁止はされていますが、罰則がない訓示規定です。ただし、路上で客引きをすれば第5条の勧誘罪で逮捕されます。「売春した」ではなく「勧誘した」という理由での逮捕です。

Q. パパ活は売春防止法に引っかかる?

食事やデートだけなら対象外です。性交を伴い、不特定の相手から金銭を受け取っていれば売春の定義には該当します。ただし行為自体に罰則はありません。SNS等で相手を募集する行為は第5条の勧誘にあたる可能性があります。

Q. 風俗店は売春防止法違反にならないの?

風俗店は「本番行為(性交)なし」を建前にしています。第2条の定義が「性交」に限定されているため、性交類似行為のみを提供するサービスは売春防止法の対象外です。ただし、実際に本番行為が行われていれば売春に該当します。

Q. 買う側にはどんな罰則がある?

売春防止法には、買う側を直接罰する条文がありません。ただし相手が18歳未満であれば児童買春禁止法、同意のない性交であれば刑法の不同意性交等罪など、別の法律で処罰されます。

Q. 頂き女子は売春防止法違反になる?

頂き女子」の行為は、性交が伴えば売春の定義に該当する可能性があります。ただし実際に問われやすいのは詐欺罪(刑法第246条)です。金銭を騙し取る行為のほうが罰則が重く、捜査の対象になりやすい。


08|📝 まとめ

売春防止法は「売春そのもの」ではなく「売春を助長する行為」を罰する法律です。

売春した本人には刑事罰がない。でも勧誘すれば逮捕される。仲介すれば周旋罪。場所を貸せば場所提供罪。管理して売春させれば最重の10年以下の拘禁刑。

パパ活との関係で言えば、食事だけなら対象外。体の関係があっても行為自体の罰則はない。でもSNSで相手を探す行為が勧誘に該当する可能性はある。

この法律は1956年から基本的な構造が変わっていません。買春側を罰する規定がないこと、罰金額が時代遅れであること、被害者保護が弱いこと。課題は多い。

法律を知っていれば、自分がどこにいるのか、何がラインなのかが見えてきます。知らないまま過ごすより、知ったうえで判断するほうがずっと安全です。

📌 この記事は2026年3月時点の情報です。法令は改正される場合があるため、最新情報は弁護士にご確認ください。